八ヶ岳の麓、牧場を抜ける絶景パノラマコース|山梨県 美し森~天女山

八ヶ岳牧場から望む金峰山方面の山々とうっすら富士山 初心者におすすめの山
美し森~天女山の登山イラスト記録

「どこまでも続く牧場を眺めながら歩いてみたい」
そう思い立ったのが、旅のはじまりだった。

行き先を探しているうち、八ヶ岳の麓、美し森から天女山へ続くハイキングコースに出会った。

八ヶ岳の麓、標高1542mの美し森と、天女が舞い降りたという伝説をもつ天女山(1529m)。雄大な八ヶ岳の眺めと共に、富士山や南アルプスの絶景も楽しめる。何より、八ヶ岳牧場の中を横切るという、他にはない体験ができるのが、このコースの醍醐味だ。

私はその週末、山梨県清里へ向かうことにした。

美し森、絵画のフレーム越しに見る八ヶ岳

美し森山頂から見える八ヶ岳
コース概要

美し森駐車場(10分)→美し森(90分)→展望台(40分)→天女山(15分)→天の河原(15分)→天女山(40分)→展望台(90分)→美し森(10分)→美し森駐車場

旅の始まりは、美し森駐車場から。
JR小海線の清里駅から車でわずか5分、徒歩なら約50分の距離にある登山口だ。ここには、トイレ、観光案内所、売店などがそろっていて、出発前の身支度や情報集めもできるのがうれしい。

美し森駐車場から続く木階段

白く清潔な木の階段が、まるで山の導線のように緩やかに続いている。10分ほど登れば、あっという間に美し森山頂(標高1542m)へ。駐車場の標高がすでに1500m以上あるため、身構えずとも辿り着けるのがありがたい。

美し森山頂標識と八ヶ岳
美し森山頂の額縁フレーム
美し森山頂の額縁フレームから見える景色

赤岳の東尾根の一部が孤立してできたこの小高い丘から、八ヶ岳の全容が目前に広がる。
山頂には、大きな木のフレームが立てられていて、そこからのぞくと、八ヶ岳が一枚の絵画となって飛びこんできた。

羽衣池――天女の伝説が宿る静寂の池

羽衣池と水芭蕉

美し森山頂を過ぎ、林道を30分ほど進めば、羽衣池が姿を現す。
池の周りには木道がめぐり、一周できる。
肝心の池は水が少なく、草が豊かで、どちらかといえば湿原の印象が強い。
それでも、わずかな水辺に咲く水芭蕉が、春の名残を感じさせてくれる。

天女が舞衣を洗い浄めた、という伝説が伝わる羽衣池。
その名が示す通り、ほんのりと神話の香りが立ちのぼる、不思議な空間となっている。

川俣川の渡渉と小滝――涼やかな森の一幕

川俣川

羽衣池を後にして進めば、やがて遠くから水音が聞こえ始める。
森の中で出会うのは、荒々しく転がる岩と清冽な流れ、川俣川

川俣川の小滝

岩を伝って渡渉し、右手へ目をやれば、苔むした岩壁から細い滝が糸のように落ちているのが見える。
その涼やかな姿は、立ち止まれば一瞬、心まで洗い流してくれるようだ。

対岸へ渡ると、登山道は再び岩がごろごろとした荒々しい表情となり、右側の壁から崩落した雰囲気もまとわりついてくる。
こうした場所は、できれば立ち止まらず、足早に通り過ぎるのがよい。

八ヶ岳牧場――空と緑が開ける場所

八ヶ岳牧場

森の中の登山道を抜けると、突然、八ヶ岳牧場が眼前に広がる。
どこまでも続く緑、そして青い空。
「こんな牧場をのんびり歩きたい」。そう思ってやってきたのだけれど、目の前の風景は想像以上のものだった。
その圧倒的なのびやかさと爽快感は、ずっとここに佇んでいたい、そう呟きたくなるほど心を惹きつける。

八ヶ岳牧場から見える八ヶ岳
八ヶ岳牧場から見える金峰山方面の山々

入り口には柵があり、一人ずつ通れる小さな通路がある。
ハイキングコースが牧場を通るというだけでも面白いが、両脇を柵で囲まれながら、八ヶ岳、南アルプス、奥秩父、そして遠くには富士山まで、まるで大パノラマの中へと踏み出していく気分だ。

八ヶ岳牧場の見晴台
八ヶ岳牧場の見晴台から見える八ヶ岳

牧場内には小高い見晴台があり、抜けた先からの南アルプスの眺めは、また格別となる。
この日は牛たちの姿はなかったものの、きっと標高1200mの爽やかな空気の中で、のびのびと草を食べているのだろう。

天女山と天の河原――伝説と眺望が交差する尾根

笹薮の森

牧場を後にして、しばらく森を歩けば、やがて天女山の駐車場が姿を現す。
ここは、車でもアクセスでき、駐車場からわずか1分ほどで天女山(標高1529m)の山頂へたどり着くことができる。
天女が好んで住むようになり名付けられたというその山頂からは、南アルプスや八ヶ岳の雄姿が一望でき、東屋もあるので、のんびり休憩を楽しめる。

ただ、ここからさらに15分ほど登れば、天の河原という眺望の場所があるという。
天女山から一旦駐車場へ戻り、権現岳へと続く登山道へ進めば、次第に登りが強まり、森の様相も一層登山らしくなる。
天の河原(標高1620m)はその途中のポイントで、南アルプスがより一層、凛とした姿で出迎えてくれた。

天の河原のテーブルとベンチから見える南アルプス
天の河原のテーブルとベンチでおにぎりランチ

ベンチとテーブルがあり、ここでお昼休憩を取ることにした。
辛子明太子とツナマヨ、何の変哲もないコンビニおにぎりが、こんな風景の中で口に運ぶと、不思議と贅沢で特別なものに思えた。
休憩中、上から何人かの登山者が下りてきた。おそらく権現岳からの帰りなのだろう。
その姿が、次の挑戦への憧れとなり、「次はここから権現岳へ登ってみたい」という思いが芽生えた。

八ヶ岳の麓を歩く贅沢――帰り道で見つけた宝物

オキナグサ

天の河原から再び元来た道を辿り、ピストンで美し森駐車場へと戻る。
行きには気付かなかったが、登山道の脇でオキナグサが静かに咲いているのを見つけた。
白い毛で覆われた姿がどこか微笑ましく、ふわふわとしたその佇まいが印象的だ。
個体数が激減しているそうで、よく見ると石で囲われ、まるで小さな花壇のようにして保護されていた。

こうした小さな出会いが、山旅の豊かさを何倍も大きくしてくれる。

美し森の売店と巨砲ソフトクリーム

思わず時間を忘れてしまうほどの美しい風景と共に、ゆっくりと美し森駐車場へ戻る。
朝、訪れたときには気付かなかったが、売店ののぼりに「巨峰ソフトクリーム」の文字が目に飛びこんできた。
「そうだ、ここは山梨だ」。
その一口は、甘酸っぱく爽やかで、下山後の体と心を優しく癒してくれる、ご褒美となった。

まとめ|八ヶ岳のパノラマコースで心に残るハイキングを

八ヶ岳牧場から望む雲がかった富士山と金峰山方面

山梨の八ヶ岳南麓は、赤岳や権現岳などの本格的な登山ルートだけでなく、美し森~天女山のような絶景ハイキングコースもおすすめです。美し森山頂、八ヶ岳牧場、天女山、天の河原……どこを切り取っても写真に収めたくなる風景が広がり、四季を通しての登山やハイキングにぴったりです。

標高1500m以上の涼やかな空気の中、八ヶ岳のパノラマと山梨ならではの自然の恵みを味わってみてください。

【アクセス情報】

  • 美し森駐車場:JR小海線 清里駅から車で約5分、徒歩約50分
  • 天女山駐車場:車でのアクセス可能
美し森~天女山が初心者におすすめな理由
  • 【アクセスしやすい】 JR清里駅から美し森駐車場まで車で5分、徒歩でもOK
  • 【絶景満載】どこまでも続く緑と青の八ヶ岳牧場、富士山、南アルプス、八ヶ岳のパノラマビュー
  • 【安心のコース】 道はよく整備されていて、初心者や家族連れでも歩きやすい
  • 【大自然と共に】 八ヶ岳の麓ならではの四季の移ろいをたっぷり味わえる

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