
「お花見登山、今年はどこにしよう?」と迷ったら

春の山選びは、どこか胸がそわそわする。桜の時期は短い。だからこそ、どの山に行くかは毎年ちょっとした悩みどころ。
今年は、どの山の桜を見に行こうか――そんなことを思いながら、登山アプリの地図を指先でなぞっていたら、ふっと浮かんできた名前があった。お伊勢山。
山梨県大月市にある標高550mの山。市が選定した「秀麗富嶽十二景」のひとつで、富士山と桜、そのふたつの美しさを一度に味わえるだけでなく、周囲の山々とルートをつなげれば、さまざまな縦走コースも描ける。
桜の木はおよそ3000本。その数の意味するところは、実際に訪れてはじめて実感できる。
お伊勢山へのアクセス|大月駅からのバス旅
JR中央本線「大月駅」の改札を抜け、バスロータリーへ向かうと、すでにザックを背負った人たちが数人、列を作って待っていた。どうやら皆、桜目当てらしい。
ハマイバ行きのバスに揺られること約20分。下車した「上真木」バス停では、乗客たちが次々と降り立つ。バス停にはベンチがあり、みんなそこで靴ひもを結び直したり、それぞれ装備を整え、お伊勢山へと向かう。
上真木バス停(13分)→お伊勢山(25分)→花咲山登山口(45分)→大岩山(20分)→花咲山(35分)→又平山(35分)→花咲山登山口(35分)→大月駅
大神社からお伊勢山へ|桜に誘われる道


大神社の鳥居をくぐると、静かな石段が続いている。足元には桜の花びらが積もっていて、春の道を登っていく感覚になる。石段の先には神社の社殿が現れる。

ふと鳥居を振り返れば、桜の枝越しにぽつりと富士山が姿を見せた。狛犬たちも、まるでその景色を見守るかのように静かに座っている。
神社を通り過ぎると、なだらかな山道が始まる。道の谷側には、満開の桜たち。歩くたび、登山というより、春の散歩道のような心地。
山頂の絶景|満開の桜と富士山が並ぶ場所

気づけば、あっという間にお伊勢山の山頂へ。満開の桜越しに、神社で見たときよりも存在感がある真っ白な帽子をかぶった富士山が姿を現す。目を疑うほど、絵に描いたような風景だ。ソメイヨシノに混ざって、一本だけ咲く八重桜がいいアクセントになっていた。

カメラを構える人、レジャーシートを敷いて宴を始めるおじさまたち──まるでピクニック会場みたいに、あちこちで笑い声がこぼれていた。
お伊勢山の絶景をひとしきり堪能した後、大神社方面へ戻ると、すぐにトイレがある。イベント時以外は紙がないという張り紙も、この日はきちんと補充されていた。ありがたい。

そこから先の道にも、桜とベンチが点々と続き、まるで「お花見ロード」のよう。しばらく歩いた先、斜面いっぱいに広がる桜の向こうに、またしても富士山が顔をのぞかせる。どこを見渡しても、すべてが春。ここはピンクの異世界だろうか、と思うほどの幻想的な風景だった。

この景色だけでも、ここを選んだ意味があった。いやもう、これだけ見られたなら今日の山歩きは大成功。
花咲山への道のり|岩場の劇下り、そして達成感
お花見だけが目的なら、お伊勢山で十分すぎるくらい満たされる。満開の桜と富士山のコラボレーションなんて、絶景を堪能できただけでもありがたい。けれど今日は、せっかく来たのだからもう少し足を伸ばして、トレーニングも兼ねて花咲山まで歩くことにした。

次なる目的地は花咲山。振り返ると、お伊勢山が淡い桜色に染まっているのが見える。一山すべてが花で彩られているのだと、こうして俯瞰して初めて気づく。
花咲山へ向かう途中、大岩山からの下りは「難路」との看板が。ちょっとドキドキしながら進むと、現れたのはロープが頼りの劇下りの岩場。しかもよく見ると、崩れている箇所があり、足の置き場にはかなり気を使った。慎重に一歩ずつ──そのうち、不思議と楽しくなってくる。この「ちょっと怖い」を越えていく感じ、登山の醍醐味かもしれない。

さらに進むと、思った以上にアップダウンが多くて、なかなか骨が折れる。だけど、「これは良いトレーニングの山だな」と思った。これから夏山の季節がやってくる。少しずつ体を慣らしておかないと。
カフェで締めくくる春の山旅

下山後は舗道を歩いて大月駅へ。駅前にある「月Cafe」は、どこか懐かしい空気をまとった喫茶店。入口の前には立派なミモザが咲き誇っていて、黄色のふわふわとした花々が美しい。

ランチタイムに間に合ったので、今日は生姜焼き丼を注文。じゅわっと柔らかい豚肉と、セットのサラダにかかった酸味のあるドレッシングが、暑い登山のあとには体に沁みる。以前来たときに食べたハンバーグのセットも美味しかったことを思い出す。
ほかにもサンドイッチやオムライス、喫茶メニューも豊富。一息つきながら、今日の山歩きを振り返るにはちょうどいい場所だった。
まとめ|お伊勢山は、春の絶景をくれる山

お伊勢山は、登山とお花見、両方を楽しみたい人にとって、まさに理想の場所だ。
標高550mとは思えない眺望、約3000本の桜が咲き誇る道、そして冠雪の富士山というご褒美。桜の見頃は限られているけれど、その短さこそが特別さを際立たせているのかもしれない。
「今年はどこでお花見登山をしようかな?」と迷ったら──お伊勢山。富士山と桜を同時に望む、贅沢な春のハイキングへ出かけてみてはいかがでしょうか。
山梨県 お伊勢山|初心者にもおすすめの花見登山スポット。富士山と桜を一望できる春の絶景ハイクへ。
【アクセス情報】
- お伊勢山登山口:JR中央本線 大月駅から富士急バス ハマイバ行きで約20分、上真木バス停から徒歩約13分
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